連載 医療機関で起きる法的トラブルへの対処法・32
患者への説明義務
辻野 沙織
1
1弁護士法人 色川法律事務所
pp.1099-1103
発行日 2023年12月1日
Published Date 2023/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541212079
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■1 医師の説明義務★1
医師は,診療契約★2に基づき説明義務を負うとされています(最判平成13年11月27日★3.以下,最判).説明義務を明確に定めた法律上の根拠はないものの,医療法1条の4第2項では,「医師,歯科医師,薬剤師,看護師その他の医療の担い手は,医療を提供するに当たり,適切な説明を行い,医療を受ける者の理解を得るように努めなければならない」旨努力義務として規定されています.
そもそも,手術など患者の身体への侵襲を伴う診療行為は,刑法上の傷害罪や民法上の不法行為責任が成立し得る行為です.これが医療行為として正当化されるためには,診療行為を受けるか否かを自ら決定する権利(自己決定権)に基づき,患者が,医師から十分な説明を受けた上で診療行為に同意することが必要です.このように,医師からの「十分な説明」に基づき患者の「同意」を得ることをインフォームド・コンセント(informed consent)といいます.
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