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■地域包括ケア病棟の役割の変化
地域包括ケア時代の患者像は,高齢で複数疾患を有し,ADLと栄養状態・認知機能が低下し,ポリファーマシーになりやすい.入院前から継続して入院中も包括的な生活支援を必要とする患者が多くなる.リハビリテーション(以下,リハ)は,社会復帰を目指す脳卒中モデルよりも,生活復帰を目指す廃用症候群・認知症モデルが主となる.QOLとQODの価値観は人それぞれ異なる上,介入のエビデンスは乏しいためアドバンス・ケア・プランニングや多職種カンファレンスは必須となる.このような患者像は虚弱“multimorbidity患者”とよく重なる.multimorbidity(多疾患併存)1)の定義は「複数の慢性疾患が併存しており中心となる疾患を特定できない状態」とされる.
地域包括ケア病棟(以下,地ケア病棟)は2014年度診療報酬改定で創設された.急性期後の患者の受け入れ(ポストアキュート;PA)と在宅療養中の患者等の緊急や予定の受け入れ(いわゆるサブアキュート;SA),在宅復帰支援の3つの機能を有し,地域包括ケアシステムを支えている.しかし,コロナ禍での地域ニーズや医療制度改革が地ケア病棟の立ち位置を揺るがしている.第一にこれまで在宅から直接入院していた患者のうち,在宅や介護施設で診療を継続できる患者,高度急性期病院の進化する医療に期待する患者が増えることで,いわゆるSAが減少する兆しがある.第二に急性期後の患者にとって,初発の脳卒中は回復期リハビリテーション病棟への転棟が王道であり,心不全や誤嚥性肺炎は直接在宅に退院する.自院一般病床からの地ケア病棟への転棟割合の制限も拡大するため,PA減少の兆しがある.そして2022年度はこれらの兆しを捉えた診療報酬改定2)が行われた.
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