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■はじめに
本稿で紹介する社会医療法人仁寿会加藤病院は,島根県のほぼ中央に位置する邑智郡川本町にある.川本町は,中国地方で最も大きい河川である江の川沿いに展開する自治体であり,可住地は総面積の約7%,あとは水田・畑地が約6%,山林が約72%という中山間地域である.島根県江津市と広島県三次市とを結ぶJR三江線の中継地でもあったが,利用客の減少により2018(平成30)年4月1日付で全線廃止となった.もともと道路での移動が一般的となっていたため,利便性が大きく低下したわけではないが,社会心理的なインパクトは大きい.
図1は川本町の人口の状況を見たものである.2017(平成29)年現在で3,397人の人口は今後さらに減少し,2040年には2,100人程度になると予想される1).その主たる原因は,コホート分析の結果からも分かるように,死亡の増加である.2020(令和2)年の65歳以上人口割合は47.9%,75歳以上人口割合は29.8%と推計されるが,これが2040年にはそれぞれ49.5%,36.0%になると予想されている.また,75歳以上における女性比率も62.5%から65.4%に増加する.
図2は上記の人口推移を前提としたときの傷病構造の変化を見たものである(推計は川本町のある大田医療圏).外来・入院とも傷病にかかわらず全て減少局面にある.要介護高齢者の数もすでに減少しており,川本町の所属する邑智郡総合事務組合は2040年に対2010(平成22)年比で70%,大田市は80%となる2).
圏域内の医療機関の状況は,病院が4施設,診療所が54施設,歯科診療所が22施設,薬局が22施設で,病院の機能別病床数を2018(平成30)年度の病床機能報告で見ると表1のようになっている3).このうち大田市立病院については,建て替え時に335床を225床にダウンサイジングし,病棟構成も一般+療養のケアミックス化することが予定されており,既存の療養病床は介護医療院への転換も検討されている.
本連載で紹介した東八幡平病院のケース4)と同様,人口減少と高齢化が進む地域で,地域医療を担う病院をいかに維持していくかは非常に重要な地域政策である.こうした地域においては,限られた人的資源で効率的にサービス提供を行うことが求められるが,それは必ずしも国の医療・介護政策と整合性のあるものではない.特にこうした地域で地域医療を担う病院が民間病院である場合,経営の自立性も求められるため,一般財政などからの補助の入る公立病院とは異なり,社会経済状況,医療・介護政策の状況を踏まえながら,より柔軟なマネジメントが求められる.
本稿では,厳しい社会経済環境の中で,大田医療圏において在宅療養支援をコア事業とする医療・介護複合体として地域の安心を保証している仁寿会の取り組みを紹介する.
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