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■はじめに
医療福祉建築賞(一般社団法人 日本医療福祉建築協会主催)の創設29年目にあたる2019年度は,2015〜2017年度(3年間)に竣工した作品が選考の対象となった.今回は計28作品,種別では病院15作品,診療所4作品,保健・福祉施設など9作品の応募があった.過去10年の平均応募数が27であることを考えると,平年並みの応募件数で,また施設種別の内訳も大きな変化はなかった.
一次選考では,提出された応募資料を基に選考が行われ,11作品を現地視察対象とした.その後,現地視察を経た二次選考において審議の結果,医療福祉建築賞として4作品,医療福祉建築賞準賞として1作品を選定し,授与を決めた.
選考過程では「完成度」をどのように考えるのかが議論となった.各施設種が抱える状況,歴史的な積み重ねが異なる中で,規模も種別も異なる施設を同一軸で評価することの難しさがある.その一方で,だからこそ価値のある本賞の意義や価値も議論した.受賞作品以外においても増築・改築・改修などの好事例があった.制約ある条件下で計画されるこのような作品事例に対する評価の難しさもあったが,社会的状況も踏まえると今後はこのような事例がさらに重要度を増すであろうことも確認した.今日的・地域的・社会的課題への意識と取り組み,建築・運営的な解決法とその成果から,将来に向けての医療福祉施設の発展,質の向上につながる芽を持つ作品,新しい型の創出や施設のあり方に一石を投じるような明確な姿勢や理念を持った施設が評価されたと言える.
なお,選考委員は今期から,大野秀敏(アプルデザインワークショップ),川﨑つま子(東京医科歯科大学医学部附属病院),小林健一(国立保健医療科学院),渋谷明隆(北里大学),角晴輝(竹中工務店),山崎敏(トシ・ヤマサキまちづくり総合研究所)と筆者の石井敏(東北工業大学)の7名が務めている.以下,受賞作品を紹介していく.
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