特集 医療費の配分を問う
巻頭言
神野 正博
1
1社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院
pp.809
発行日 2009年10月1日
Published Date 2009/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101546
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
8月30日に行われた総選挙は,民主党の歴史的大勝に終わった.同党がマニフェストで示した「社会保障制度の安定」,医師養成数やコメディカルスタッフの増員を狙う「医療提供体制の整備」,総医療費引き上げを謳う「地域を守る医療機関を維持」などの行方が注目される.一方,社会保障国民会議は昨年の11月に2025年の社会保障のあるべき姿とそれに必要なコストを提示した.そこでは,日本の人口構造の変化と,それに伴う有病者の増加や要介護者の増加から,2025年における莫大な人的・物的コストを予想する.さらに,景気の後退とともに,内需の柱として,雇用の吸収先としての社会保障費の拡大が叫ばれている.このように,医療崩壊論とあいまって医療費拡大論議にフォローの風が吹いているのかもしれない.
しかし,政権交代にかかわらず,わが国の財政状況を鑑みると,医療に楽観論は禁物である.医療を利用する患者,国民に対して責任のある財源論とともに,限られた医療費の合理的な配分論の提示を避けたならば,政治家も,行政官も,医療経済学者も,医療関連団体も,そしてわれわれ医療現場管理者も専門家(集団)としての責任を放棄したのに等しいのではないだろうか.
Copyright © 2009, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.