連載 医療現場の「働き方改革」 医療の質を担保しつつ労働負荷を低減させる方法・1【新連載】
病院の「働き方改革」とは
福島 通子
1
1塩原公認会計士事務所
pp.68-73
発行日 2020年1月1日
Published Date 2020/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541211119
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■連載を始めるにあたって
なぜ「働き方改革」が必要なのか
国を挙げて進められている「働き方改革」の影響が,良かれ悪しかれ医療現場に出始めている.これまで,日本の質の高い医療は,医師をはじめとする医療従事者の自己犠牲的な精神によって支えられてきたといっても過言ではない.そのような中で,実害として長時間労働を原因とする過労死や過労自殺などが起こり,労働基準監督の是正勧告も増加傾向にあることが報道されると,やっと医療業界も例外ではないことに気付き,業界を挙げて改革に乗り出すこととなった.しかし,医療機関特有の理由などが阻害要因となって,なかなか改革が進まない.国の管理下で医師数が制限され,他の医療従事者の絶対数不足にも苦しみながら,増加する患者の診療に追われている医療機関が少なくない.特に,地域医療を支える特定の病院や,研修医を抱える医療機関などでは,医療崩壊を懸念する声も聞かれるほど,病院の働き方改革は一筋縄ではいかない状況だ.さらに医療機関にはまだまだヒエラルキーが存在し,保守的な雰囲気がぬぐえない.これらの解消には,法的な拘束以前に,組織上層部の意識改革や民間企業に倣った業務プロセス改革が必要になってくるものと思われる.
国が目指す「働き方改革」は,人手不足が深刻化する中,多様な働き方を整備して,育児・介護などの問題を抱えながら働く者や高齢者や障害を持った者を含めた労働力人口を増やし,かつ労働生産性を上げるという目的を持って,労働環境の見直しを求めている.往々にして改革を強制されていると考えがちだが,特に医療機関では,形だけではない真の改革に着手する絶好の機会と捉えるべきだ.
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