連載 事例から探る地域医療再生のカギ・19
夕張医療センターの医療再生(後編)
伊関 友伸
1
1城西大学経営学部マネジメント総合学科
pp.65-69
発行日 2018年1月1日
Published Date 2018/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541210628
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■何が問題だったのか
①財政破綻の危機に直面する夕張希望の杜
夕張市立総合病院の破綻を受け,夕張医療センター(有床診療所と介護老人保健施設夕張)の指定管理運営により,全国的に高い評価を受ける医療・介護・健康づくりの実践を行った村上智彦医師と夕張希望の杜であったが,その運営は苦難の連続であった.運営当初に起きた最大の問題が,資金不足であった.前回も述べた通り,指定管理開始の契約に際して,夕張希望の杜は,夕張市・北海道に対して建物の老朽化に起因する必要以上の光熱水費負担,建物の事前の修繕,建物・医療機器の修繕について負担割合を決め,公費負担を求めた.指定管理者の契約後は,関係した行政担当者は全員いなくなり責任の所在も曖昧なまま,約束は履行されなかった.その結果,2008年4月,夕張希望の杜は高額な光熱水費の負担などが原因で深刻な財政危機に直面する.追加融資を含め夕張希望の杜が借り入れた1億2千万円はほぼ使い果たし,このままでは資金がショートすることが確実な状況に追い込まれた.
2008年4月30日,筆者は病院アドバイザーの立場から,夕張医療センターで記者会見を行った.夕張医療センターは,あくまで夕張市が設置した「公設」民営の施設であり,民営にしたからといって,行政の責任がなくなるというものではない.病床の確保や24時間体制の救急対応など不採算部門については,行政の責任をもって負担すべきであることを訴えた.記者会見の効果などもあり,夕張市は2008年7月に,2007年度分の光熱水費の補塡として約2600万円の財政支援を行った.この財政支援により,夕張希望の杜は当面の資金不足を解消する.
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