連載 事例から探る地域医療再生のカギ・16
兵庫県立柏原病院の医療再生(後編)
伊関 友伸
1
1城西大学経営学部マネジメント総合学科
pp.544-549
発行日 2017年7月1日
Published Date 2017/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541210515
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何が問題だったのか
①止まらない医師退職
「小児科を守る会」の活動で全国的に有名になった兵庫県立柏原病院であるが,小児科以外の医師の退職は止まらなかった.特に減少が著しかったのが内科で,2004年に13人在籍した医師が2009年には5人に減少する.内科医のいない病院では十分な診療ができないという理由で他科の医師も引き揚げが起きる.脳神経外科,皮膚科,泌尿器科,眼科,耳鼻咽喉科,麻酔科の常勤医が不在となり,医師5人体制であった整形外科は,一時期常勤医師が不在となる(その後1名を雇用).2004年に44人在籍していた常勤医師数は,2008年には19人にまで減少する.
医師数の減少により病院の提供する医療も縮小する.夜間も含め365日受け入れてきた午後5時以降の診察時間外の内科救急は,原則二次救急輪番制の当番日である水曜のみ(土,日曜も当番日のみ)となった.心臓カテーテル治療が必要となる心筋梗塞などの患者の受け入れもできなくなった.脳神経外科も,医師退職により脳卒中や頭部外傷の患者の受け入れができなくなる.医師の大量退職により,病院の入院患者数は大幅に減少する.図1は,常勤医師数と1日平均入院患者数の推移を示すグラフであるが,患者数は2002年度の298人から2008年度には73人と約1/4の水準に落ち込む.
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