連載 事例から探る地域医療再生のカギ・18
夕張医療センターの医療再生(前編)
伊関 友伸
1
1城西大学経営学部マネジメント総合学科
pp.878-883
発行日 2017年11月1日
Published Date 2017/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541210587
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■何が問題だったのか
夕張市の財政破綻
2006年6月20日,夕張市長は市議会において財政再建団体の指定を国に申請する方針を表明した.当時夕張市は,一時借入金の会計操作などにより約600億円に及ぶ巨額の借り入れを行っていた.夕張市は夕張市立総合病院(171床.以下,総合病院)を経営しており,病院は毎年3億円近くの借り入れを行って運営がなされていた.一時借入金の総額は約39億円に達していた.夕張市本体が破綻したことにより,総合病院はこれ以上の借り入れができず,倒産状態に陥ることとなった.
筆者は,縁あって2006年8月〜2007年3月末まで,夕張市から病院経営アドバイザーを委嘱され,総合病院の医療再生に関わった.当時,総合病院は炭鉱の閉山による急激な人口(患者)の減少,大学からの医師引き揚げに伴う医師不足,看護師の大量退職,福祉の貧困による社会的入院の多さ,不適切な救急車の利用や無診察投薬の横行などを抱えていた.院内のマネジメントも,夕張市役所本体が多額の借入金を隠していたこともあって非常に閉鎖的で,情報統制をしていた.病院幹部間のコミュケーションも悪く,組織としての体を成していなかった注.
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