連載 事例から探る地域医療再生のカギ・7
長崎県離島の医療再生
伊関 友伸
1
1城西大学経営学部マネジメント総合学科
pp.61-66
発行日 2016年1月1日
Published Date 2016/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541210003
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■何が問題だったのか
①離島の医療機関の経営環境の悪さ
長崎県は九州の西北部に位置し,人口約142万人(2010年国勢調査).東西が213km,南北が307kmと東西・南北に長い県である.無人島を含めると約600の島があり,そのうち離島振興対策実施地域の指定を受けた有人島は51島ある.外海離島である五島列島(五島市・新上五島町),対馬島(対馬市),壱岐島(壱岐市)には,県人口の約1割である約13万人が居住している注1.
本土への交通手段を船か飛行機に頼るしかない離島において,病院・診療所は地域の生命線というべき施設である.住民に医療を提供するために,離島の各市町村はそれぞれ病院・診療所を運営していたが,慢性的に医師・看護師が不足し,施設も財政力の弱さから劣悪な状況にあった.1960(昭和35)年,長崎県は複数の市町村が行ってきた病院・診療所経営と県が行ってきた保健医療政策を一体化させるという,当時としては画期的な「医療圏構想」を打ち出す.2次医療圏域の医療の充実を図るため基幹病院の施設の整備を行い,1968(昭和43)年には,県と関係1市17町3村が共同して医療施設を経営する「長崎県離島医療圏組合」を設立する.組合の管理者には長崎県知事が就任した.
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