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■はじめに
現在,全国の都道府県で地域医療構想策定の議論が進んでいる.推計ツールが採用した仮定や計算ロジックに関する説明のないまま推計値のみを示すというような運用をしている地域もあり,現時点では必ずしも望ましい形で検討が進んでいるとは言い難い状況である.データブックとして配付されている種々のデータに基づいて現在および将来の傷病構造と人口構造を把握した上で,現在の医療提供体制がそれに合うものなのか,問題があるのであればそれをどのように解決していくのかを話し合い,そして地域関係者の合意のもとでその対策を具体化するという地域医療構想本来の目的に沿った運用がなされることを期待したい.
今回の地域医療構想の策定のポイントは,地域包括ケア体制確立の中核となる地域包括ケア病床の充実(急性期から回復期への病床シフト)と,地域における慢性期の対応体制の確立である.急速な少子高齢化の進行,特にこれから10年間で生じる団塊世代の後期高齢者化は,わが国の医療介護提供体制に急激な構造変化を要求することになるだろう.このように変化の速い時代には,柔軟な対応が可能である民間中小病院の役割が重要になる.
しかしながら,現在の急激な環境変化の中で,民間中小病院の経営者の不安が高まっているのも事実である.そこで本連載では,各地で新しい試みを行っている民間中小病院に焦点を合わせ,それを地域医療構想や地域包括ケアの視点から理論化してみたい.筆者自身こうした試みを行うだけの力量があるのか自信はないが,その必要性は高いと思われることから,あえてこのような実験的な連載をしてみたい.的外れな部分もあるかもしれない.読者の方々の忌憚のないご意見をいただければ,それをもとに適宜軌道修正していきたいと思う.
連載の1回目である本稿では,民間中小病院のあり方に関する筆者の問題意識を述べてみたい.
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