連載 医療の可視化と病院経営・1【新連載】
連載の目的と概要
松田 晋哉
1
1産業医科大学医学部公衆衛生学教室
pp.76-81
発行日 2015年1月1日
Published Date 2015/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541209777
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■1 なぜ医療の可視化が重要なのか
少子高齢化の進行と低経済成長の持続により,社会保障財政の将来に対する不安が高まっている.他方で,医療技術の進歩は著しく,分子標的薬やハイブリッド手術室など,新しくそして高額な医療技術が日常診療の場に次々と導入され,医療の高額化も進んでいる.医療保険は本来短期保険であり,したがって年度で収支が均衡するように運営するのが原則である.しかしながら,わが国の医療財政の40%は税金であり,しかも,その財源の大部分は実質的に赤字国債に頼っている.国債は国民が国に貸しているお金であり,これは国民の財産であるという議論もあるが1),借金で現在の医療を賄うのはやはりおかしい.
医療に関しては効率化が必要であるという.多重受診や多すぎる検査や投薬の事例など,現在の医療に効率化する余地があることは否定できないが,多くの急性期医療の現場を見ていると,医療は過少投資であると考えざるを得ない.人が足りないのである.医療に対する世の中の一般的な認識と医療現場が抱く認識の不幸な違いを解消しない限り,医療システムを適正化することは難しい.
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