連載 病院勤務者のためのDPCデータ解析入門・1【新連載】
連載の目的と概要
松田 晋哉
1
1産業医科大学公衆衛生学教室
pp.310-313
発行日 2016年4月1日
Published Date 2016/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541210084
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
■はじめに─連載の目的
少子高齢化の進行,そして長引く経済の低迷といった社会経済環境の中で医療制度のあり方が問題になっている.平成27(2015)年度に設置された内閣府の経済・財政一体改革推進委員会(会長:新浪剛史 サントリーホールディングス株式会社代表取締役社長)では,政府が2020年度にプライマリバランスを黒字化するという目標を閣議決定したことを受けて,「社会保障」「社会資本整備等」「制度・地方行財政」「教育,産業・雇用等」の4領域ごとにワーキンググループが設置され,より効率的な社会システムを作るための工程表の作成が行われている.社会保障領域では44項目の改善領域が設定され,それぞれの進捗状況をモニタリングするためのKey Performance Indicator(KPI)の策定が行われている1).
日々の業務に追われている現場の医療職の立場から考えると,対GDPで見たとき先進国で最も低い比率の医療費であるにもかかわらず,これだけの医療へのアクセスのしやすさと医療の質を達成しているわが国の医療制度は十分効率的であるというのが正直な思いであろう.こうした現状を反映して医療者は医療へのより多くの資金投入を求めるが,支払い側である財界関係者は「医療には効率性という点において改善すべき無駄があり,それを改善することで医療費の適正化は可能である」と主張する.例えば,土居らは医療提供体制の改革(地域差の是正)で3.4〜5.5兆円,ジェネリック医薬品の普及で0.8〜0.5兆円の削減が可能であるという試算を紹介している2).
Copyright © 2016, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.