病院給食の変貌
病院給食の考え方と今後の課題
原 正俊
1
Masatoshi HARA
1
1厚生省保健医療局健康増進栄養課
pp.607-611
発行日 1987年7月1日
Published Date 1987/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541209106
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■病院給食の概要
戦後の混乱期には,患者が身のまわりの世話や給食などについて,その時代なりに満足できる入院生活を送るためには付添人が必要であった.病院から出された食事を付添人が,付添人の作った食事を患者が食べているような状態であった.この実態は昭和22年10月,米国社会保障制度調査団の次のような報告内容のもとに,総司令部・公衆衛生福祉部の日本の医療に対する指摘となった.
「西洋の視察者にとって,日本の病院のもっとも顕著な特色は,病室または控室内に,衣類,寝具,包み,箱類,炊事道具およびさまざまな調理段階にある食物などの個人所有物とともに,患者の親戚が多数いることである.戦前においてすら,患者の家族の誰かが病院へ付添っていき,患者の世話をするのが伝統的風習であり,通常,家族の者の寝る場所が,病室またはその近くに設けられていた.もちろんこの処置は,アメリカの病院に広く行われているものとは全然異なった看護の概念によるものである.したがって,比較的少数の看護婦しか必要とせず(外来と手術室とを除いて),専門的看護技術の適用が,絶えず家族がいることと,場所がふさがれていて不潔であることとのために,困難もしくは不可能であった.日本人は,家族の誰か(または家族の召使)が入院患者に付添うことを主張し,たとえば看護婦やその補助的仕事が,病院の使用人によって果たされても,家族の付添いに固執するということである.
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