病院職員の基礎知識 病院合理化の基本的考え方と技法
患者数変動要因分析技法
村山 三郎
1
Saburo MURAYAMA
1
1林眼科病院
pp.874-875
発行日 1985年10月1日
Published Date 1985/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541208698
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昨年10月健保法改正が施行され,健保本人の1割負担によって,患者数や保険請求点数にどのくらい影響があったかという調査結果を地区医師会やその他いろいろな機関が発表していました.その調査資料の取り方をみますと,①改正前3か月のデータと改正後3か月のデータを比較するやり方と②改正後の3か月のデータをそれぞれ前年同月と比較するやり方がとられていたようです.
①の方法では8月号でも述べたように,患者数変動要因には季節的月別変動要因がありますので,改正前3か月と改正後3か月では,もともと患者構成比に差があり,比較の対象にはなりません.それでは②の方法ではどうでしょうか.確かに前年同月との比較ですから,月別変動の要因は自然吸収された形になり一見合理的に思えますが,やはり前述の数字の方向性,つまり年々の患者数の増減の傾向値を無視していますから,これも厳密には比較データにはなりません.ただし年々患者数に変動がない場合(実はこれが問題なのですが)のみ有効です.本来,健保法改正による影響等は偶発変動の要囚であり,基本データから各変動要因を分離捕捉してはじめて明確にすることができるもので,単にトータル的な数字を比較しても判断ができません.経営統計の先人たちはこのような問題も誠に見事に解決して見せてくれています.
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