増刊号 メタボリックシンドローム健診検査技術マニュアル
総論
8. 生理的変動要因
河口 勝憲
1
,
市原 清志
2
1川崎医科大学附属病院中央検査部
2山口大学医学系研究科保健学専攻生態情報検査学
pp.1062-1076
発行日 2007年10月15日
Published Date 2007/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101873
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
検査データを解釈するとき,基準範囲が異常を識別する目安となる.臨床医は基準範囲と比較して病態を推測し診断の手がかりとする.また,検査値の変動は治療効果や予後の予測に有用な手段となる.しかし臨床医に検査を信頼して利用してもらうには,測定値の精度管理が的確に行われ,計測上の誤差が小さいことが前提となる.しかし,いくら測定上の誤差を小さく保っても,検体採取の条件が不適切であったり,採血中や採血後に測定値を歪ませる要因が加わると,本来の病態による変化を正しく判定できないことになる.
測定値が変化する原因を分類すると,病気による変動(病態変動,pathological variation),生理学的な現象としての変動(生理的変動,physiological variation)と,測定上のさまざまな問題で生じる変動(測定技術変動,analytical variation)に分けて考えることができる.
生理的変動は,さらに個人の年齢,性,環境,生活習慣,遺伝的因子などに左右される,個体間変動(between-individual variation)と,同じ個人内でも検体採取前の体位や活動度,採血時間などで変化する個体内変動(within-individual variation)に分けて捉えることができる.一方,採血条件や検体の保存条件,測定操作上の問題など検体採取時から測定終了までの過程で生じる測定値の変動を測定技術変動と呼ぶ.
本稿では,これら検査値の変動要因のうち,生理的変動を取り上げ,その要因別に変動機序と,その影響を受けやすい検査項目を系統的に整理して解説する.
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.