病院と地域活動
診療と保健活動を柱とした病院づくりを目指して
伊藤 新一郎
1
,
森 俊介
2
,
伊藤 瑞子
3
Shinichiro ITO
1
,
Shunsuke MORI
2
,
Mizuko ITO
3
1長崎県離島医療組合厳原病院
2長崎県離島医療組合厳原病院保健活動室整形外科
3長崎県離島医療組合厳原病院診療部小児科
pp.79-82
発行日 1985年1月1日
Published Date 1985/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541208506
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病院の背景と医療資源
対馬は日本で3番目に大きい島で,面積709.8km2,南北82km,東西18kmの大きさを有し,上県郡の中心地,比田勝から,下県郡の中心地,厳原まで98km,車で2時間を要する.南北の長さは,長崎県本土の最も長い直線距離の2/3にも達し,時間的には長崎〜佐世保間に匹敵する.しかも6町,129部落に分散した集落の85%は,人口500人以下の部落であり,はとんどは剣しい山岳地形のため,主幹道路から,無数の支線に分かれた沿岸に存在している.島内唯一の公共交通であるバスは便数が少ないため,住民は島内医療機関への通院さえも自家用車を用いる以外に満足に行えない.更に最大の難点は九州本土から遠く離れていることである.すなわち,福岡市から147km,長崎空港から比田勝までの同心円上には薩摩半島が位置する(図1).この地理条件は古代より記録されており,『魏志倭人伝』には,「……所居絶島,方可四百余里,土地山険,多深林,道路如禽鹿径,有千余戸,無良田.……」とある.この悪条件は現在でも基本的には変化していない.
島の人口は年々減少し,昭和59年4月現在48,683人である.人口構成をみると,65歳以上の占める割合は長崎県平均と全く同じ11.8%で,県内に数多く存在する人口1,000人以下の小離島にみられるような極端な老齢化(65歳以上人口は25%)は起こっていない.
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