厚生省から'84
周産期医療施設・設備整備費について
関 修一郎
1
Shuichiro SEKI
1
1厚生省児童家庭局母子衛生課
pp.417
発行日 1984年5月1日
Published Date 1984/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541208304
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最近の我が国の周産期・新生児・乳児死亡率の改善は誠に目覚ましい.1982年は乳児死亡率が世界一になった.とにかく,母子保健のパラメーターは完全に世界のトップクラスであることを表している.文化的向上や衛生思想の普及,医療技術の向上などがこのような目覚ましい改善の理由であると思われるが,ここ10年くらいの間に急激に整った新生児医療の全国的システム化が最も大きい役割を果たしたことは確実である.
新生児医療のシステム化が行われていった背景には二つの重要な事実がある.まず全世界的にみて小児科学の数ある領域の中でも新生児学ほど,ここ10年の間に発達したものはないということである.小児科学会や専門誌の中で常に最も多い分量を占めている.この傾向は,まだまだ続くようである.次に児童福祉法に規定される中央児童福祉審議会の昭和49年における答申である.この中に妊産婦・新生児の救急医療システムの重要性が謳われている.これを受けた形で,更に学界の気運も盛り上がっていたこともあいまって,新生児のICU (NICU)の施設設備整備費の予算補助が医務局予算に計上されたのである.昭和57年の厚生科学研究によれば,質的ばらつきはあるにしても全国約8割の地域にNICUが整備され,地域医療の中で一般医療施設と高次の施設の役割分担が推進され,病的新生児や未熟児の搬送システムが確立されつつあると言ってよいようである.
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