病院職員のための医学知識
中性子治療
橋本 省三
1
1慶応義塾大学病院放射線科
pp.1054-1055
発行日 1981年12月1日
Published Date 1981/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207628
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中性子を照射する治療は今までの方法と,どのように違うのでしょうか.
今までの放射線治療は,X線表在・深部治療,高エネルギーX線と電子線(直線加速器やベータトロンによる),ガンマ線を照射するテレコバルトなどで,日本全国では医療機関の0.9%に設置され,約700台の装置が活躍しています.
これらの放射線は低LET (linearenergy transfer)放射線と言って,物質の中を通り抜けるときに生ずるエネルギーが少ないものであると定義されています.したがって癌を照射するときには十分な線量を照射しないと癌細胞が死にません.つまり生物学的効果比率(relative biologi-cal effectiveness, RBE)が低い放射線です.そして十分な酸素が供給されている癌細胞だと効きがよいけれども,大きい腫瘍の中心にあるような酸素が少ない環境で生きのびている癌細胞には効きが悪い,すなわち酸素効果(oxygen enhancementratio, OER)が大きい放射線であるということがその特徴であります.したがって照射の効果のあるものは放射線感受性の高い,小さい,血流の多いような癌に限られるという,ある限界をもっています.
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