海外見聞記
英国のホスピスを見て
高橋 勝三
1
1武蔵野赤十字病院外科
pp.804-805
発行日 1981年9月1日
Published Date 1981/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207571
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10月下旬,ヨーロッパの空はさえない.2週間の滞在中晴れた日はただ2日という生憎の季節であったが,そのある晴れた日にロンドン南郊のセット・クリストファー病院を訪れることになった.ロンドン市中でタクシーを拾い,行先を示すと,紳士然たるドライバーは「分かった.しかしお金は6ポンドかかるが…」と言う.「O.K.」ロンドン南郊のその町,シデナムにつくには確かに30分くらいかかった.新興住宅の郊外地といった風情で,緑は多いが田園風景ではない.
実はその日の午前中,ロンドンの病院協会King's FundでDickson博士(放射線科医)から英国におけるホスピスの現状についてスライドを交えながら説明を受けた.それによると女医サンダーズ博士が,末期がん患者がそれまで加療してきた内科医,外科医,放射線科医,婦人科医から半ば見捨てられ,どちらかと言えば宗教者に任せられる傾向に憤慨して末期がん患者の世話をすべく15年前に南ロンドンに病院を建てた.これがセント・クリストファー病院である,その後この仕事は多くの理解を得て5年前にはNational Soci-ety of Cancer Reliefが発足した.仕事は寄付金を集めて建物を立て,国民保健機構(N.H.S.)へ移穣することである.こうして15年間にウエールズ,イングランドに12か所のホスピスが出来た.
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