新 病院建築・40
多翼型平面—ヨーク病院とスンズバル病院
伊藤 誠
1
1千葉大工学部建築学科
pp.337-341
発行日 1981年4月1日
Published Date 1981/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207448
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ノースウィック・パーク病院
病院建築における"成長と変化"の問題をはじめて的確に指摘したのは英国の建築家ジョン=ウィークス氏である.彼は「無限定建築」と題する論文1)の中で,病院機能の急速な発展と変化に建築がもっと正面から対応すべきであることを説き,みずからの具体的な解答としてノースウィック・パーク病院(NorthwickPark Hospital)の計画を紹介した.竣工後まだ数年もたたない病院で早くも増改築の問題を考えなければならないといった経験を何度か繰り返しながら,事の本質を掘り下げて考えてみることをしていなかった筆者にとって,ウィークス氏の"growthand change"についての指摘は正に頂門の一針であった.
この病院は約800床のベッドをもつ教育病院で,研究所を併設している.特徴は,病院を構成する各部門をそれぞれ独立の棟とし,それら相互を渡り廊下で結ぶ形をとっていることである.各棟の端部は,平面的にも構造的にも増築可能なようにしてあるから,どの部門も必要に応じ他に影響を及ぼすことなく増築できるというわけである.翼端の扱いに関するこの手法を彼はオープン・エンドと名付けているが,この呼び方はやがて我が国でも広く使われるようになった.
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