医療の周辺 生物学—最近の話題・4
生命の機械論と医学教育
長野 敬
1
1自治医科大学・生物学
pp.148-149
発行日 1980年2月1日
Published Date 1980/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207084
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前回生物学教育について多少触れたが,別の側面からもう少し,これと関連して具体的な生物学の進歩に触れてみたい.ここに取り上げようというのは筋収縮の機構なのだが,なぜ取り上げるかについて簡単に前おきを述べる.
教養課程の生物を担当していて,筆者なりに講義で強調することの一つは,生命の機械論的な見方ということである.今や生命機構は徹底的に分子機械として理解されてきた.それだからこそ遺伝子操作や人間工学も可能になった.そして人間も,特殊性はもちろんあるけれども,動物からの絶対的な不連続は何もない存在である以上は,やはり機械という目で理解できる.その理解が分子・原子のレベルまで精緻に完成してきた一例は,もちろん分子遺伝学の分野だけれども,個体の生理機能で言えば,筋収縮の機構が手ごろな具体例である.生理学の基礎知識として,もちろん必要なものだけれども,それ以外にも以上のような含みで,筋肉を取り上げることがある.筆者流の話の持ち出し方を,一通りご紹介してみたい.
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