連載 医療と社会 ブックガイド・79
『〈個〉からはじめる生命論』
立岩 真也
1
1立命館大学大学院先端総合学術研究科
pp.178-179
発行日 2008年2月25日
Published Date 2008/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100871
- 有料閲覧
- 文献概要
なぜ前回の続きがこの本の紹介なのか,説明は不要と思うから省く。書評,でなくごく短い紹介を共同通信社の依頼で書いた。なにぶん短い文章であり,新聞のそうした欄に書けるのは,争いを構成する論点についての異論の提出といったものではない。それはその制約のもとでは書けないし,ごく短く書いたとして,その本をまだ読んでない人には理解しにくいだろう。そしてもしその本がよい本であるなら,そのことを読者に言うのがよいだろう。そこでそのように書く。それでも一言二言加えることはするが,それ以上はあきらめ,その一言二言は常に舌足らずになる。そこでこの欄ではすこしゆっくり見ていきたいと思う。
この本で加藤が取り組んだ新しい主題は「ロングフル・ライフ訴訟」,すなわち「重篤な先天的障害をもって生まれた人が,その苦痛に満ちた生そのものを損害であるとして,親に中絶することを促さなかった医師に損害を請求する」(p.20)訴訟だ。第2章で論じられる。加藤がこの主題に取り組んでいることは知っていた。私も企画を担当した2003年の日本社会学会大会のシンポジウムで加藤はこの主題での報告を行っている(この報告も上記の私の紹介も,いつものようにHPに掲載してある)。だがここでは,第1章「胎児や脳死者は人と呼べるのか─生命倫理のリミット」をとりあげる。
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.