医療の周辺 生物学—最近の話題・3
医学教育と生物学教科書
長野 敬
1
1自治医科大学・生物学
pp.60-61
発行日 1980年1月1日
Published Date 1980/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207062
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医学部の教養課程で一般生物学を教えていると,教科書にいろいろ不満が出てくる.それでも自分で書いたら,とてもこれだけのものはできそうもないので,辛い点はつけにくいのだが,あえて注文は注文として指摘しておくならば,これこれの事項は単に医学の準備というのみでなく生物学としても大事なことだからぜひ触れてあったらなと思う事項が,すっぽり抜けていたりする.
例えば一例として,多くの教科書では免疫という話題が一度も出てこない.あえて考えれば,抗体グロブリンによる典型的な体液性免疫というのは,脊椎動物という特殊な一群の動物に限った問題だと言えなくもない.医学におけるその重要性に至っては,ホモ・サピエンスという一種だけの哺乳類に限ったいっそう特殊な評価に過ぎないから,生物学全体から見ると省略できる程度のものであると,皮肉に言えば言える.しかし免疫現象というものを,やや広く,外界に対しての生体の防御機構の一端としてとらえるならば,一般生物学というわく組みの中でも,触れずにはすまされない問題というべきだろう.
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