新・病院建築・22
西郷病院の建築設計—市街地中規模民間病院の機能を追求
小林 深智子
1
1稲冨建築設計事務所
pp.873-877
発行日 1979年10月1日
Published Date 1979/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206999
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
日本における病院の今後のあり方は,どうあるべきであろうか.国立と公立,そして私立,診療所(クリニック)の関係をはじめ,立地条件,規模,質の問題に至るまで,こと"生命の尊厳さ"にかかわることだけに,大変むつかしい問題である.特に,大都市の重層化や都市のパターンを無視して,単に国立センターから地方への施設ハイラルキーをあたかも"図書館行政"のように造り上げたとしても,完全には解決しないのである.やはり病院というものは,一番基本に,医師,看護婦をはじめとする職員の使命観,誠実さ,情熱,技術の高さなどがあって,生まれ出て来るものである.しかし,だからといって,建築家の立場から病院建築というものに提案がないわけではない."人間が建築をつくる.--やがて建築が人間をつくる"ということわざのように,建築の質の持つ重要さについても強調したいのである.
この病院が完成して患者たちが入院して来て,「この病院にいると病気がはやく治るような気がします.」と言っていると病院長からお聞きした時の喜びは,建築家にとって筆舌に尽くしがたいものであった.このような試みは,たとえ小さいものであっても,病院長,理事長,医師,看護婦,病院の各スタッフの理想と実行力と祈りがその基本にあってはじめて実現するものであるし,また私立であればこそ,全員が一丸となってやり遂げることができたのではないかと思う.
Copyright © 1979, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.