最近の判例からみた医療事故・5
美容目的のための侵襲と医師の説明義務
稲垣 喬
1
1大阪法務局訟務部
pp.404-405
発行日 1978年5月1日
Published Date 1978/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206540
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判例
医師が患者に対して医的侵襲を加える場合には,患者の自己決定権を尊重し,その目的,危険度等について十分説明しその承諾を得るようにすべきであるとするのが,近時の医療実務の趨勢でもありこの要請は医療から遠い侵襲の場合にとくに大きいというべきであろう.本件は美容目的のため右眼眥の腫瘤を摘出するに際し,球結膜への侵襲について医師間での伝達確認がなく,患者に対し十分な説明をしないで手術を実施したことで,医師らの過失が肯定された事例である(京都地裁昭51・10・1判決.判例タイムズ348号250頁).診療の適否そのものとは別な分野で,義務違背の成立が認められた場合として注目される.
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