精神医療の模索・2 患者の人権
精神病患者ないしは患者とされる者の人権はいかに守られるべきか
寺嶋 正吾
1
1福岡家庭裁判所医務室
pp.158-161
発行日 1978年2月1日
Published Date 1978/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206462
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精神科において精神障害者を入院させるにあたり最大の問題となるのはその人多数が他科における入院とは違って,自由意思に基づく入院ではない点である(元吉教授10)によると,ある調査で精神病院では自由入院はわずかに0.2%しかなかったという).憲法31条"何人も法律の定める手続によらなければその生命若しくは自由を奪われ,又はその他の刑罰を科せられない"の手前,精神病患者(厳密には「精神病患者とされる者(prospec-tive pt.)」)12)を入院させる(自由をせばめる)ためには法律の定める手続("due process")をふむことが必要なのである.そこに精神障害者とされる者の意思に反した強制入院に関する法律が不可欠なのである.
どの国家においても,社会にとって「危険な者」に対しては警察権限("police power")によって対応し,社会を防衛しようとする.また,「自らを保護しえない者」に対しては国が代って「保護者としての国」の権限("parens patriae"power)をより所としてその者を保護する.このふたつの基本的考えが法律の形で実体化されている3,15).
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