病院の窓
低成長下の病院と職員の働きがい
小笠原 道夫
1
1医療法人財団河北病院
pp.17
発行日 1978年1月1日
Published Date 1978/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206411
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戦後30年の医療界の高度成長の時期は,ほぼ社会の需要を充たして,1つの区切りに到達した感がある.病院にとって,病床の増設は急増した医療の量に対応する手段であったし,鉄筋化,暖冷房の完備は,医療消費者の生活水準の向上に対応して進められてきた.またこの間にあって,目ざましい医療技術の発展が,多くの進歩した医療機械の導入をもたらす結果となった.これらの病院の高度成長を振返ってみると,それぞれ必要性があって生じたものであるが,その一面,戦後のわが国経済界の高度成長の波にまき込まれ,必要以上の速さで高度成長を余儀なくされた点もないわけではない.施設,設備の拡張が必ずしも地域医療の必要性によったものではなく,そうすることがその施設の存在価値を維持することが目的であった場合もなかったとはいえない.医療施設がその地域の需要を充たすまでは,各病院が独自の考え方で発展成長してもさしたる問題は生まれないであろうが,昨今の少なくとも都市における状況のように,ほぼその需要を充たした後はいかなる事態になるだろうか.自然発生的な過剰設備は,自然淘汰によって整理される他ないであろうから,そこには不必要な競合が生じ,これが安定した形に落ち着くまでには,多くの医療経済上の浪費が生ずることは自明の理であろう.自由経済社会においてはそれも止むを得ないとする考え方もあろうが,膨大する医療費を考える時,不必要な浪費を防ぐこともまた医療人の義務の一つであろう.
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