特別寄稿
老人問題の行方―体験的老人論
砂原 茂一
1
1国立療養所東京病院
pp.217-222
発行日 1988年3月10日
Published Date 1988/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662207499
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見るべきほどのことは……
"見るべきほどのことは見つ"といった人がいるが,これは数の問題ではなく,おそらく深さの問題であろう。数を数える段になれば,この日新月歩の世の中に,人間の欲望は"もっと見たい,次も見たい"ととどまるところがなく,何時になっても死に切れないであろう。一方,人生の深みを見通してしまえば,"あといくら数を見ても同じことだ"という洞察に到達して,従容として死の床につけるかも知れない。
いうまでもなく,私は数を数えるしかない算術的人間だから従容として老いに安んじ,死を待つ心境には程遠い。
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