今日の精神医療・11
精神障害者の社会復帰施設—東京都立世田谷リハビリテーション・センターを見て
岩佐 金次郎
1
1井之頭病院
pp.75-80
発行日 1973年11月1日
Published Date 1973/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541205161
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社会復帰施設設置への発端
1.精神神経学会の提言
精神障害を,分裂病に限ってみても,その病者の社会復帰について,多くの精神科医は体験として深い悩みと多様な困難を持ち続けてきている.しかし,こうした苦しみのなかにある精神科医が多く現われてきたのは戦後であり,戦前派医師のほとんどは,臨床精神科医としての意識が偏っており,活動範囲はきわめて狭かったから,ルーチン的‘治療’はするとしても,社会復帰を目標としている医療活動とはいえず,したがって,悩みや困難を持つことは少なかった,と言わざるをえない.そして,残念だが,同じような現象が戦後派の一部の精神科医にも認められる.——こうした事情は,精神神経学会の活動に当然のことながら影響していて,一群の医師の活動はあったとしても,その医療体系委員会が小委員会をつくり,社会復帰施設をとりあげて検討しはじめたのは,昭和41年12月で向精神薬がわが国へ導入されてから,8年余りがたっている.現在の他科の多くの医師さえ,精神病になれば廃人と思いこんでいるのは,このへんの事情もあずかっている.
小委員会は,43年にその‘案'を発表し,精神障害者(主として分裂病が対象)の社会復帰促進のための社会復帰医療センターと,更生施設の設立を提言した.
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