ミズーラだより・6
最大の国内問題
紀伊国 献三
pp.70-71
発行日 1971年6月1日
Published Date 1971/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541204348
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医療費は年間15%の上昇 1970年代は医療の年だといわれています.これはアメリカだけではなく,世界的な問題なのでしょう.特にこの国では,医療費の急激な上昇で,現在年間750億ドル(27兆円)を消費し,年間15%もそれを上昇させながら,乳幼児死亡率は世界の10位以内にはいれないとか,平均余命が日本より下回るとかの成果しか上げていないことの批判が強く,特に財政の問題では私的保険料はうなぎ上りに上昇し,しかもそれが賄ってくれるのは全医療費の1/3弱ということで,ケネディ案・グリフィス案など全国民医療保険法案が目白おしに提案されて,1972年の大統領選挙で公害とならんで最大の国内問題になるといわれています.
百家争鳴の医療論議 そしてその変化は,ここ数年,特に顕著な気がします.1965年からの数年におびただしい数の医療関係の立法が生まれたことも,この変化の現われでしょうか(そういえば昭和23年以来の立法を大事にしている国もありますが).そして外国人から見ると,驚くほど自己の医療提供システムを効果的でない,ノンシステムであると強く批判しています.米国医療の危機,医療の貧困,病院の悪夢などと,マスコミも加担して百家争鳴の感じがします.ある意味で,この姿は進歩を促す健康的な姿ともいえるでしょう.専門家以外は批判できないという発言が見られる国との差を感じさせるといっても,あながち皮相的観察ばかりでない気がします.
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