精神病院の管理・8
身体医学的管理
岩佐 金次郎
1,2
Kinjiro Iwasa
1,2
1財団法人井之頭病院
2北里大学
pp.99-102
発行日 1970年8月1日
Published Date 1970/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541204056
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はじめに
戦前はもとより,戦後数年間の精神病院における身体医学的管理は,今思い出してみても,ぞっとする.たとえば,肺結核患者は,1室に隔離されていると言えばきこえはよいが,実体は,島流しにされているようなものであった.全国の精神病院で,レントゲン写真撮影装置を持っている施設はほとんどなかったし,備えてあっても,活用されていなかった.精神病院内の肺結核の蔓延は,最近まで関係者を悩ませたが,根源は,長い間の管理の不適切に基づいている.
赤痢についても同じようなことがいえる.私の経験によると,肺結核は処理できるが,赤痢とは,永久に縁をきることはできないのではないかとさえ思う.‘赤痢をなくす一番の妙案は,保菌者摘出に努めないことだ’などという冗談でも言いたくなるくらいである.統計は古いが,昭和27年の保健所の全国調査によると,赤痢菌健康保有者は0.6%であり(現在も,ほぼ同じであるという),関東地区では,東京都・川口市・浦和市と川崎市付近は汚染度が高いという.しかし,事実は,これよりはるかに高率である.井之頭病院が入院時赤痢菌検索で得た保菌者比率は,昭和35年3.74%,36年4.03%であった.
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