ホスピタルトピックス 建築設備
慶応病院の特等病室
伊藤 誠
1
1千葉大学工学部
pp.94-95
発行日 1965年7月1日
Published Date 1965/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541202629
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慶応義塾大学病院の新病棟が最近竣工した(設計:三菱地所株式会社)。特等・1等・2等など,いわゆる差額徴収を前提とした病室ばかりの棟である。各室ともいたれりつくせりの豪華さであるが,その中でもとりわけ特等病室には目をみはる。室内の仕上げや家具造作,設備の程度の立派さはいうまでもないが,面積的な点についてだけでも従来のものには比類がない。25.6m2(7.7坪)の病室に,18.9m2(5.7坪)の応接室と約1間半の押入をもった畳敷きの副室とがついている。このほかに,洗面所,浴室,便所,調理室があり,専用のバルコニーだけでも19.5m2(5.9坪)ある。バルコニーを除いて,合計76.6m2(23.2坪)を1人の患者が占有するわけで,個室1室当たりの面積は6.3m2以上なければならないとしている医療法の規定など,何だか奇妙にさえ思えてくる。これは,住宅公団が最近,団地のアパートのごく一部に建設している最大規模の住戸にほぼ匹敵し,夫婦に子供2人ぐらいの家族を対象としたいわゆる2DK型(寝室になり得るへやが2つとダイニングキッチンをもつタイプで,もっとも一般的な規模のもの)の倍に近い。
医療収入にきつい枠をはめられている病院が,唯一の活路のごとく差額病室の建設を競っている現状には,すでに各方面から批判の声があがっている。
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