研究室から
慶応大学心肺研究室
沖野 遙
pp.167-168
発行日 1959年6月15日
Published Date 1959/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425906080
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私共の研究室は石田二郎教授と笹本浩助教授を指導者として約30名の内科助手が各項目を分担して心臓と肺を中心として全身をみるという立場で研究している。簡単に心肺病態生理の研究といつても方法論的に最近甚だ多岐に及び,又,精密化を要求される。これに加えて単に疾患をそのあるがままの姿としてのみ把握するだけでなくその生体の外的条件の変化に対する反応能力を動的(dx/dt)に観察するための努力がなされている。このために項目を大別すると,肺機能(肺の気相中心),心臓カテーテル(肺循環,冠循環,先天性と後天性心疾患),換気メカニクス,電解質・糖・脂質代謝,心及び血管系の流体力学等に分けられる。まず肺機能関係は本邦で指導的立場にあつて,気道・肺・胸廓との関係をスパイログラフ,N2・CO2・CO連続分析装置等を用いて独自の研究手段を確立し,莫大な検査例数に基いて,肺機能諸因子から臨床例の分類に成功している。心臓カテーテルは内圧測定,血液・呼気ガス分析に加えて物質代謝,心室残留血量,気管支血流量の測定等を各種濃度のO2・CO2吸入,運動負荷等の操作を負荷してその経過を追つて反復するために,多人数の緊密な協力作業が行われる。この方面で最近注目している課題は肺高血圧症の成因であつて,この状態が持続すると所謂肺性心(Cor pulmonale)に至つて生命が危機に瀕する。
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