学会特別講演抄録
病院内感染の管理について
永沢 滋
1
1日本大学医学部病院管理学
pp.711-716
発行日 1960年10月1日
Published Date 1960/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541201712
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I.緒言
院内感染症の問題は最近各方面の注目をあび,病院管理の面からも重要な問題となつてきた。1938年Sulfapyridineの発見以来,細菌に対する治療はいちじるしく進歩し,その後1941年Penicillinが臨床応用されて以来今日のような抗生剤の発達となつたのであるが,Penicillinが使用されるや,翌年はやくもその使用患者から耐性菌が証明され,これらの増加が警告された。これが院内感染の問題として追及されるようになつたのは1949年以降である。
病院という環境はあらゆる病原菌が集中する場となることはやむをえないことであるが,微生物による感染について,種々な抗生物質の発見により細菌性感染が大幅に抑制された結果,病院自体いまだこの院内感染に無関心であるところに問題があった。すなわち感染一般の防止に対する誤つた安心感と無菌および隔離技術の厳重さの弛緩,また感染問題研究に対する興味の減退などをきたしたのであるが,その後抗生物質の不必要に近いほどの広汎な使用の結果,抗生物質に対する不関性および耐性菌特にブドウ球菌の出現によつてこの問題に大きな関心がもたれるようになつてきたのである。
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