特集 病院と緑化
病院庭園の在り方について
桜井 盛二
1
1新潟県立加茂病院
pp.163-175
発行日 1960年3月1日
Published Date 1960/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541201625
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I.まえがき
元来私は,園芸には趣味に近い親しみを感じていた。かつての苦しい戦時中など,好んで畑作りをした。秋晴の日ざしを浴びながら菜園に立つて,自分で蒔いて,自分で育てた,すなおにのびた野菜類など眺める時,そこには生活のみじめさもなければ,労働の過重も感じない。傷ましい周囲の環境から全く離脱して,何とも云わなれい素晴らしい心持ちになるのであつた。然し病院の庭園について,強い関心を持つ様になつたのは,それよりずつと以前のこと,ある新築移転したばかりの病院に赴任した時からであつた。
病院は砂で埋め立てられた敷地いつぱいに建てられ,玄関先きの猫額の庭には,張られたばかりの芝と,34本の木が,申訳の様に植えられていた。周囲や,裏の空地には,木らしいものは1本も見当らない。雑草さえも,ろくに生えない地面は,全く裸のままで,うちすてられていた。それが鉄筋コンクリート建,味のない巨大な建物と相まって,「何と云う殺風景な病院だろう」と感じたのが,新任の私の第一印象であつた。
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