特集 医事業務
医療過誤の医事法制的考察—とくに医師の過失責任について(その1)
高橋 正春
1
1科学技術庁計画局
pp.905-912
発行日 1959年11月1日
Published Date 1959/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541201590
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
I.緒言
医療過誤の問題が医学の領域におけるのみならず,法律学や社会的領域においてもまた極めて重大な意義をもつものであるということは,医師と患者との間における民事もしくは刑事事件や社会問題が近時その発生の頻度を増している一事に照らしても,容易に肯かれるところである。更にこのような事象は,今日では医療過誤が発生した場合に,それが単に医学的事実として評価されるにとどまらず,法律的あるいは社会的事実としての評価をうけることがさけられなくなつて来たことをも意味している。そしてこのような評価が正当に行われなければならないということは,その結果がただに患者側に利益をもたらすというためばかりでなく,法律生活としての医業の学と術と法との重層構造を深化せしめるためにも,更には医学医術の進歩を促し,ひいては医の倫理の一指標を確立するためにも必要な一事である。このような見地にたつて,拙論はそれらの一連の諸問題のうち,特に範域を医療過誤における医師の民法上の過失に限定して,若干の考察を試みようとするものである。
Copyright © 1959, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.