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医療機関における被用者の不法行為に基づく使用者の責任について—医療と法制の研究(1)
高橋 正春
1
1科学技術庁
pp.89-96
発行日 1959年2月1日
Published Date 1959/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541201468
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緒言
わが民法はその第715条において,「或事業ノ為メニ他人ヲ使用スル者ハ被用者カ其事業ノ執行ニ付キ第三者ニ加ヘタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス但使用者カ被用者ノ選任及ヒ其事業ノ監督ニ付キ相当ノ注意ヲ為シタルトキ又ハ相当ノ注意ヲ為スモ損害ヲ生スヘカリシトキハ此限ニ在ラス(第1項)」と規定している。
本条に規定されている不法行為は,民法第714条(責任無能力者の監督者の責任)や同第717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)などの規定におけるそれと同じく,いわゆる特殊不法行為の慨念に包含されるものの一つであつて,不法行為に際して加害者自身がその損害賠償義務を負う一般的不法行為とはその成立要件を異にするものである。すなわち本条規定は他人を使用する者をして,とくにその被用者の加害行為についての賠償責任を負わしめようとするものであつて,このように他人の行為についての責任を負うべきであるとする理念は,現代社会における企業者の責任を論ずる上において,極めて重要な意義を有するものである。
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