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豊岡病院設計覚書
山根 正次郞
1
1日建設計工務株式会社取締役計画室
pp.9-14
発行日 1955年10月1日
Published Date 1955/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541201012
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まえがき
おおさか9時50分発出雲大社行急行いづも号に乗ると,およそ3時間40分で「とよおか」に着く。その次に有名な名勝「玄武洞」をはさんで,古くからの温泉地「きのさき」がある。この豊岡市の東方に巾の宏い円山川がのろのろと流れているが,駅からバスの通るひろい道路を東に進みこの川にぶつかつたところ,眺めの良い堤防に接して公立豊岡病院がある。私がこの街に初めて足をふみ入れた時,何となく曾て来たことがある土地の様な身近かな気がしてならなかつた。私は京都で生れ育つたのだが,それほどここは京都の感じによく似ている。と云つて寺や神社が多いという訳でもないのだが街の家なみ,民家のただずまい,小さな物売りの店の品物のならべ方とか,その前に小腰をかがめているおばさんなどと云つた様な事までがある沈滞さをもつて京都の勾いを感じさせるのである。此は京都人でない人が京都と豊岡とを比べてみてもおそらくはわからないと思われるような目に見えない底の方からにじみ出てくる肌ざわりとも云えよう。そんな事で私は豊岡の町に初めから非常な親近感を持つ事が出来た。
豊岡病院は大へん古い歴史を持つていて,創立されたのが明治4年と云われ,現在の建物は木造二階建で敷地約6800坪,病床280床,建築延面積約2200坪の規模をもつている。
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