調査報告
脊髄小脳変性症(SCD)患者の実態―豊岡健康福祉事務所の32事例の分析から
田中 明美
1
,
森本 幸子
1
,
坂田 壽乃
1
,
青木 瞳
1
,
中山 貴美子
2
1豊岡健康福祉事務所保健指導課
2神戸大学大学院保健学研究科
pp.584-590
発行日 2009年7月10日
Published Date 2009/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664101230
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■要旨
豊岡健康福祉事務所管内では脊髄小脳変性症の有病率が高いことに着目し,保健師の支援方策を見出すことを目的に32事例の分析を行った。対象の特徴として対象者の平均年齢は66.5歳,病型はオリーブ橋小脳萎縮症15人,小脳皮質萎縮症11人,その他6人であった。発症の平均年齢は53.3歳,発症から診断までの期間は平均4年5か月,発症から中等度への移行期間は平均7年11か月,症状は31人に運動失調がみられた。
在宅療養者27事例の生活状況は,平均家族人員(本人を含む)は3.3人で,主たる介護者としては配偶者や母親が多く,介護者の年齢も60歳以上が7割と高齢である。介護力不足や介護負担を感じている介護者は9割を超えており,介護力も3~5年で変化が予測される事例が7割と,近い将来,在宅での療養生活が困難になるリスクが高い状況となっている。また,介護保険,自立支援法,難病居宅生活支援事業などの何らかのサービスを利用している者は16人,重症度が中等度以上で,サービスを利用していない者は6人であった。
これらの結果から支援方策として,①病態の特性や社会的な背景を理解したうえでサービスなどを導入する時期を見極め,タイムリーに対応していくことが必要,②在宅支援の充実を図るためにサービス利用についてのニーズ分析を行うことが必要,③在宅での療養支援体制の整備のためにケース検討会や研修会を開催し,ケアマネジャーなど関係機関との連携を強化していくことが必要であると確認できた。
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