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院長と病院勤務医師との診療業務上の関係—法的考察を中心として
石原 信吾
1
1病院管理研修所
pp.5-13
発行日 1954年7月1日
Published Date 1954/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541200833
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1.まえがき
院長は病院に於ける管理の最高資任者である。その限りに於て院長が必ず医師でなければならぬという論理的必然性はない。現に,アメリカ等に於ては,院長は必ずしも医師たることを要せず,又実際上医師以外の者が院長になつている場合も少くないという。こうした場合に於ては,院長と病院勤務医師との関係は,それが管理面にのみ限定せられる為に,比較的容易且つ明確に規制し得られるのであろう。然し乍ら,我が国に於ては,医療法(第10条)によつて,病院管理者は必ず医師(病院が歯科医業をなす場合は歯科医師)でなければならぬことが定められている。医療法のこの規定が如何なる理論的根拠にもとずくものであるかということは,興味ある一つの研究課題であるが,何れにせよ,其処には,院長とは病院の管理面での責任者であると同時に,診療面でも責任者であるのだという考え方が介在しているように思われる。そして我が国に於ける従来の考え方では,寧ろ前者よりも専ら後者にのみ重点が置かれ,それ故に,院長になるには先ず何よりも医師としての優れた能力の持主である事が要求せられて,その管理能力については殆んど問題にされなかつたというのが実情であるように思われる。
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