特集 労災医療と公衆衛生
ストレスによる業務上の疾病
金子 仁郎
1
,
小西 博行
2
Ziro KANEKO
1
,
Hiroyuki KONISHI
2
1関西労災病院
2関西労災病院神経・精神科
pp.90-94
発行日 1989年2月15日
Published Date 1989/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207865
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■はじめに
ストレス(正しくはストレッサー)因子は物理・化学的ストレス,生物学的ストレス,社会・心理的ストレスに3分類することができる.負傷,振動,騒音,有機溶剤等の物理・化学的ストレス,結核などの細菌,ウイルス等の生物学的ストレスはいずれも労働環境の改善,オートメーション化,予防衛生医学の発展によって軽減し,これらのストレスによる業務上の疾病が起こっても,比較的に因果関係の認定がしやすい.
一方,社会・心理的ストレスは過密人口社会,情報社会,競争社会等の現代社会において増加の一途をたどっているためその問題性が注目され,ストレスといえば社会・心理的ストレスを意味するようになってきている.しかし,社会・心理ストレスの客観的な尺度評価が十分に把握され得ない上に,その反応が各個人側の条件によって異なり不明確である.すなわち,ストレスが自律神経中枢である視床下部・辺縁系に働いて自律神経内分泌を介して,身体的・精神的反応を起こす場合に,各個人側の素質(体質,性格)が関与するからである.そして各個人側がストレス状況を認識するかどうかによって,ストレスの程度が決定される面もある.
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