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イギリスの病院勤務医師
高部 益男
1
1厚生省細菌製剤課
pp.11-22
発行日 1956年11月1日
Published Date 1956/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541201160
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医療に関する問題が最近において世人の関心を著しくひいている。疾病からの自由は古来人間誰でもの根本的な願望であることに変りはないが,これが医学医術の進歩をもたらす原動力となり,そしてその結果が人々に対して"あきらめ"の心理から"求める"心理へ転換の大きな力となつてきた。そして,一力において社会的経済的にその願望がいろいろの形において満足されないことも事実である。ここで,医療を社会的に組織化したならば何等かの解決方法が出てくるのではあるまいかとの考えが生れる。この数年来医療の問題がうるさくさわがれてきた一つの誘因には,健康保険制度とか医療扶助制度とか組織化せられた主として医療を求める側から見た具体的な問題の提起が数えられる。単的に云えば,組織化せられているために需給関係が数量的に明らかになり,その中でも医療経済という比較的単一化することのできる観点からの問題が明示せられることになる。即ち「赤字」に象徴せられる観方である。しかも求める側の組織化が進むにつれて,需給関係が私経済的観点から逐次公経済的観点をとらざるを得ない方向に進む。一方供給する側はそれとペースを合せる程にはその組織化が進まない状態にある。このギヤツプが問題を紛糾させる一つの原因ともなつている。
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