連載 病院が変わるアフリカの今・11
5S活動を全科,全員で推進する州病院
池田 憲昭
1
1独立行政法人 国立国際医療研究センター 国際医療協力部
pp.854-855
発行日 2012年11月1日
Published Date 2012/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541102387
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泥の文化と紛争の絶えないマリ共和国
西アフリカのマリ共和国は,泥の文化である.世界遺産に指定されている北部のトゥンブクトゥのモスクなどの歴史的な建造物から,現代の住居まで特徴的な泥による建築である(写真1).また,鉄分の多い砂を使った泥の染色が古くから人の手に馴染んできた(写真2).1920年にフランスに植民地化されるまで,この地域は様々な王国の時代を長く繰り返してきた.その間,サハラ砂漠を越えて来た異邦人が,マリの中央を流れるニジェール川に沿って交易してきたため,その影響がマリの文化に色濃く反映している.
他のサブサハラ諸国と同様にマリの保健指標は劣悪で,慢性的な保健資材,とりわけ人材不足は脆弱な保健システムの根本問題として知られている.私たちはJICA(国際協力機構)のアフリカ地域医療施設機能改善(広域)プログラム「5S-KAIZEN-TQMを用いた保健医療サービスの質の向上」として,2009年からマリ保健省による公的保健施設のマネジメント改善を支援しており,2010年2月と2012年1月にはパイロット病院のモニタリングを行った.しかし,残念ながら私たちが最後に訪れた2012年1月以降,にわかに政情不安となって日本人には退避勧告がなされた.現在もマリへの渡航は制限されている.
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