特集 なぜ今,医療基本法なのか
巻頭言
井伊 雅子
1
1一橋大学国際・公共政策大学院
pp.601
発行日 2013年8月1日
Published Date 2013/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541102581
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「基本法」とは,国政に重要なウエイトを占める分野について,国の制度,政策,対策に関する基本方針,原則,準則,大綱を示した法律である.憲法と個別法との間をつないで,憲法の理念を具体化する役割を持ち,憲法を補完するものである.医療は国政上極めて重要な課題であり,医療なくして基本的人権の保障はない.医療に対する国民の不安感が高まっている今日,「医療基本法」の制定が各分野から要望されている.「医療基本法」は,国・自治体を含む公,国民(受療者予備軍),患者(受療者),医療提供者(医療機関・医療従事者),保険者それぞれの立場の権利と義務を含むものでなければならない.
今回の特集では,「医療基本法はなぜ必要か」として伊藤雅治氏に,医療基本法について全体像をご解説いただくとともに,医療基本法のこれまでの経緯や既存の医療法との違いなどについてもご執筆いただいた.終戦から1980年代までは,医療政策の基軸が明確であり,わが国が経済成長を続けたこともあり,政策形成過程で国民的な合意形成が比較容易であったが,今後はこうした国民的合意形成が難しくなる傾向にあり,我が国の医療制度の基本方向について明確にする必要性が高まることが指摘されている.田中秀一氏には,医療現場の課題を具体的に考察しながら医療基本法の必要性について,前田哲兵氏には,弁護士として,医療基本法はどうあるべきかご考察いただいた.特に東京大学公共政策大学院・医療政策実践コミュニティー(H-PAC)の医療基本法チームリーダーを務められたお立場から,H-PAC医療基本法要綱案をご紹介いただいた.
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