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本稿は,本号の特集「医療計画と二次医療圏の今後」に関する総論的論考である.Publicly funded and privately deliveredと規定されるように,資金調達は公的に(国民皆保険体制),医療サービスの提供は民間主導で,というのが,わが国の医療政策・医療体制の基本的な特徴である.こうした公─民のポリシー・ミックスは,これまでそれなりに機能してきたと考えられる注1).比較的低い国民負担の下で,医療施設,設備等は「世界一」と言える整備状況にあり,少なくとも平均寿命や死亡率等で測った「健康の達成度」も世界トップレベルの水準にある注2).その一方で,医療提供体制に関しては,政府が有効な政策を展開できる余地はきわめて限定されたものであった.医療提供体制を基本的に規定してきたのは,実際には診療報酬政策であったと言っても過言ではない.そうした中で,医療計画は当初は病床規制のためのツールとして,また近年では地域における医療の機能分化と連携を推進していく「指針」として,医療政策における役割が次第に拡大してきている.
こうした状況を踏まえ,本稿においては,はじめに医療計画制度の沿革とその位置づけについて整理する.次に,医療計画の元々の目的であった病床規制のあり方について検討する.医療提供体制に係る量的規制は,医療費適正化を目指す先進各国にある程度共通の政策であったが,近年それが変わりつつあること,またわが国においてもその見直しの論点が2003年のワーキンググループ報告において整理されていること等について説明する.さらに,近年における医療計画の見直しの中で強調されてきた,いわゆる「地域完結型医療」の基本的な考え方について,医療圏の実態等を踏まえつつ検討する.そして最後に,医療提供体制に関する将来像を踏まえ,今後の医療計画のあり方をめぐる諸論点について検討する.
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