特集 現場に役立つ看護師をいかに確保するか
巻頭言
池上 直己
1
1慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室
pp.289
発行日 2009年4月1日
Published Date 2009/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101421
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ロンドンのセントトーマス病院に隣接するナイチンゲール博物館を訪問したおりに,看護における現場と教育の分離について知った.現場における実務と教育に同時に対応できないので,両者の分離が100年余り前に行われ,それによって看護の教員は教育に専念できるようになったが,実務から離れることになり,それ以来,「現場に役立つ」看護師の養成が課題となったと言えよう.それでも以前は,病院附属の看護学校が主流であったため,臨床実習が当該病院で行われ,また卒業生のほとんどの就職先となっていたので,両者は密接な関係を保つことができていた.しかし,病院から多額の助成金を受け,教員も依存し,低い授業料で運営されていることが多かったので,看護の地位向上は難しかった.
近年,看護大学が大幅に増え,特に国公立の場合は病院の経営主体とは独立した形で設置されるようになった.そこで,実務と教育の関係を改めて見直す必要があるように筆者は考えたが,看護界においては必ずしも認識されていないようである.加えて1989年のカリキュラム改定によって実習時間は大幅に減少し,また無資格の学生が医療行為を行ううえでの制約も強まっている.そうなると,看護師も医師と同様に,卒業後の研修制度を義務化する必要があるように思われるが,このような声も聞かれない.
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