特集 病院管理会計とBSCの効用
医療におけるBSC利用の現状と課題
渡辺 明良
1
1聖路加国際病院事業管理部 財務経理課
キーワード:
経営戦略
,
業績評価システム
,
戦略マネジメント・システム
,
戦略レビュー会議
Keyword:
経営戦略
,
業績評価システム
,
戦略マネジメント・システム
,
戦略レビュー会議
pp.103-106
発行日 2010年2月1日
Published Date 2010/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101629
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バランスト・スコアカード(以下,BSC)が日本の医療経営に導入されるようになってから,すでに10年近くになろうとしている.この間の変遷を振り返ると,三重県病院事業庁による県立病院の経営健全化計画を推進するマネジメント・システムとして2001年度から導入を進めた事例が報告されている1).また,聖路加国際病院では1999年度に医師の業績評価システムとしてBSCが導入され,その後2004年度に病院全体の戦略マネジメントツールとして展開された.済生会熊本病院では1996年度に「3ヶ年ビジョン」を構築し,その後行動計画書としてBSC的な活動を行い,2002年度にBSCとして認識し,2003年度には戦略マップが構築されるといった展開が報告されている2).その後,2003年に日本医療バランスト・スコアカード研究学会が設立されるなど,日本の医療において,BSCの導入が急速に拡大し,2007年の時点で,日本全国で約200病院の導入が確認されている3).
その一方で,BSCに対する正しい知識や理解が不十分なまま,形式的なフォーマットだけを導入し,活用されていない事例や,BSCを経営管理の仕組みとして病院全体で十分に活用している事例など,その実態は様々である.失敗事例から示唆されることは,病院経営のツールとして活用することがBSC導入の目的であるにもかかわらず,BSCを作ることが目的化し,その作成に時間と労力を費やしてしまい,力尽きて利用にまで至らないということがほとんどである.
そこで,本稿ではBSCを活用するために,どのような利用方法があるのか,その作成方法や運用方法のあり方について検討する.
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