特集 病院と家庭医療
医療再生―グループ診療のできる家庭医の育成が急務
津田 司
1
1三重大学大学院医学系研究科 家庭医療学分野
pp.877-880
発行日 2008年10月1日
Published Date 2008/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101299
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小児科医,産婦人科医不足の問題を皮切りに始まった医師不足問題は,コンビニ受診による救急現場での医師の疲弊が引き金となって,公立中核病院の救急外来廃止や内科初診外来の制限などに進展し,遂には日本全国での医療崩壊が明らかになった.崩壊の要因としては,2004年度から始まった新臨床研修制度によって地方公立大学の医師不足が起こり,関連病院の医師を大学へ呼び戻したため,地域中核病院の医師が疲弊したことが考えられている.
しかし,医療崩壊はこの3,4年の間に急に起こったのではなく,20~30年の間に徐々に進行していたのである.細分化された専門医の養成教育が加速され,各医師の守備範囲が狭小化したので,多数の健康問題を抱える高齢者は複数の専門科を受診せざるを得なくなり,延べ患者数が増大した.医学部卒業生の98%以上が専門医の研修を積むのは世界的に見ても異様な状況である.そして,専門医志向の中でも過酷な労働条件下にある救急専門医や麻酔科医の志望者が少ないことも問題である.また,救急現場の疲弊の要因の1つとして,「ビル診」など開業形態の変化によって開業医の一次救急への対応が減少したことも挙げられる.他の要因としては,種々の文書作成作業の増加など,医師の業務が増大したことも挙げられる.女性医師の増加に伴い,結婚・出産などで,実質的な労働時間の減少を来たしていることも見過ごせない.
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