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どこの職場でも仕事の忙しさや,人間関係の障害から心身の不調を訴える人が多くなっている.内閣府「国民生活選好度調査」の統計によると,今や正社員の3人に2人が,「5年前に比べると仕事の負担や責任が増大した」と答えている.また,厚生労働省「労働者健康状況調査」によれば,働く人たちの10人に6人は,職業生活をストレスと感じている.その主な理由を尋ねてみると,「働き甲斐がない」と答える人が多いことに驚く.2006年に読売新聞社の行った世論調査によると,「日本人は人間関係が希薄になっている」「人づき合いが悪くなった」と答えた人が,80%以上に達していることがわかった.しかもこの結果は大都市よりも,中都市や町村で急激に増えており,人とのつながりの喪失感が大都市だけではなく,全国的に広がっていることを物語っている.職場でもコミュニケーションや支え合いが減ったと感じる人は4人に1人にのぼり,「働き甲斐がない」と感じている人が急増している.では職場で働き甲斐を持つには,何が必要であろうか.そのことについて,筆者は3つのことを提言したい.
まず1つ目は,働く人たちが職場で必要とされたり,認められていると思えることである.2つ目は,自分の意見や気持ちを気兼ねなく表明できること,場合によっては悩みも相談できることである.3つ目は労働条件である.給料をはじめ,労働環境,休日,厚生施設などに恵まれていることである.しかし今,職場では給料に格差が生じたり,長時間労働を強いられたり,責任を取らされることが多い.特に病院の労働環境は厳しいものがある.世界の主な先進国における長時間労働者の比率を見ても,日本の労働者たちは,いかに過酷な労働条件を強いられているかがわかる1).厚生労働省の統計によると,過重労働,特に時間外労働が月に100時間以上になっている人たちは,脳血管疾患,虚血性心疾患,うつ病,自殺などの健康障害が高いというデータがあり,休息や睡眠時間が十分に取れないという裏付けもある.こうしたことから,最近ではどこの職場でも「ワークライフバランス」ということが言われるようになった.いわゆる仕事と生活の調和であり,これによって労働意欲と生活の充足を図るという狙いがある.
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